海外こぼれ話(1)特産品と土産物
コロンビア・コーヒー豆の収穫
久しく、自分の身辺雑記みたいなものを書いてきましたので、ここらで、久しぶりに海外のことについて書いてみたいと思います。内容が古く恐縮ですが、『海外こぼれ話』と称して何回かに分けて書くことにします。手始めは、滞在した諸国の特産品・土産品についてです。
コロンビア・エメラルドの原石 気軽に買えたコーヒー豆と異なり、エメラルドとなると、事はそう簡単ではありません。多摩平の公団住宅から横浜のマンションに移ったばかりのときで経済的な余裕はなく、わずかな仮払いだけで国を出たため、帰国日も近くなる頃には懐の具合もさびしくなってきました。それでも、エメラルドの指輪を土産にすれば、さぞかし妻には喜ばれるだろうと思い、現地でお世話になっていたO氏(わたしの会社上司の甥御さん)に相談してみました。案内してくれたのはボゴタ市内のとある宝石店。宝石の目利きならとO氏夫人も同行してくれました。店内にはエメラルドを中心にまばゆいばかりの宝石類が展示されていました。むろん、おいそれと手が出せる額ではありません。帰国するにあたって、航空チケットはホテルの宿泊代込みでしたので、あとはちょっとした食事代と帰国してからの交通費をのぞいた金額すべてをはたいていくらになるかを算出し、その金額を正直にO氏に話し、店主との交渉を頼みました。O氏夫妻、金額を聞いて内心はびっくりされたかもしれませんが、快く交渉してくれました。店主も顔見知りのO氏を立ててくれたのか、石こそ小さかったものの、けっこう洒落たデザインの指輪を提示してくれました。妻は今でもその指輪を気に入っており、わたしもいい買い物ができたものと喜んでおります。もっともその陰で、ニューヨークではホテルの部屋にこもってハンバーグをかじっていただけ、そして帰国してから経理のその話をしたところ、「海外を旅行するのに、そんな危ない真似をするな。現地の商社に頼めば、なんとでもしてくれるのに」と、お小言をうけました。
エクアドル・木彫り
エクアドル:パナマ帽・麻の壁掛け・木彫り・バナナ
エクアドル・たわわに実るバナナ 工芸品とは別に、エクアドルの特産物といえば、なんと言ってもバナナです。海抜2800メートルの首都キトからアンデス山中のふもとのサント・ドミンゴまで下りますと、それまでの緊張感がほぐれ、ホッと力が抜けたようになります。そこから現場のある太平洋岸のエスメラルダス(スペイン語でエメラルドの意)まではひたすらバナナ畑の中の道を進みます。その単調さ、もうイヤになるほどで、途中で車を捨てたくなるほどです。日本人にとっては、バナナは生食用オンリーですが、エクアドルなどでは料理用に使われるものも多く、甘くておいしく、しかも栄養価も高いバナナは、彼らにとっては天の恵みに近い果実だといえるでしょう。バナナを材料にいろいろな料理が工夫されていましたが、日本人の口にはなかなか合わず、食指が動かなかったものでした。エスメラルダスでは、まだ色の青い30房ほど実のついたものを市場で買って宿舎に持ち帰り、それを木製の梁からぶら下げておき、間食用に誰でもが自由にとれるようにしておく。2、3日もすれば皮が黄色くなりはじめ、数日もすれば熟度の出てきたことを示す斑点も出はじめ、おいしいバナナを楽しめたものでした。わたしの滞在時は、ちょうど日本のバナナの輸入が自由化されて10年ほど経ったころで、すでに下火となっていた台湾バナナに取って代わり、日本へさかんに輸出れていたころでした。帰国してから注意して見ていますと、日本からの資本の導入でフィリピン産が急激にのしてきて、地の利もあってエクアドル産の影がうすくなってきていことが気がかりです。いつの頃からか、エクアドルで田辺正裕さんという方がバナナを生産するようになり、日本へも入って来るようになって、たいへん喜ばしいことと思っています。ひいき目からか、フィリピン産よりおいしく思われ、わたしはいつまでもエクアドル・バナナの愛好者でありたいと思っています。
サウジアラビア・ゴールドスーク
サウジアラビア:砂漠のバラ
サウジアラビア・砂漠のバラ
サウジアラビアにはめぼしい特産品はないと書きましたが、特産品と言えるかどうかはともかく、いかにもサウジアラビアらしい特産品を一つ思い出しました。「砂漠のバラ」です。むろんバラと言っても、花のバラではありません。砂漠などで採取できる、写真でお分かりいただけるようなバラのような形をした砂の塊、あるいは石と言ってもいいのかもしれない鉱物です。地中に埋もれていたり、ときには地上へ露出していることもありますが、砂漠ではどこにでもということはなく、あるところにはあるといった代物です。そのご行ったアラビア半島東海岸のアラブ首長国連邦や北アフリカのアルジェリアでも店で売られていましたので、砂漠の特産品と言ってもよいのでしょう。「砂漠のバラ」は砂漠に含まれる硫酸カルシウム(CaSO4)、硫酸バリウム(BaSO4)といった化合物が水分に溶けて結晶化したものだと言われています。砂漠には水分がないと思われがちですが、太古のむかし、アラビア半島は海だったようで、今でも地中深く掘り下げていけば水が得られるようです。この「砂漠のバラ」、国によっては結構な値段で売られているようで、わたしが滞在していたころは空港からの持ち出しはさほど厳しくなかったのですが、ある時期から持ち出し禁止となっているようです。わたしも土産用としていくつか持ち帰っていますが、めずらしいせいか、差し上げた方からは、結構、喜ばれたものでした。 (2018年02月) |
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